安全にバンコクを楽しむために
タイは「微笑みの国」と称され、また親日国でもあり、日系企業も多く日本人在住者が多数、そして日本と同じ仏教国という色々な印象が重なって「タイは安全」という神話が情勢されているように思います。しかし実際は「在タイ国日本国大使館」(http://www.th.emb-japan.go.jp/)の「治安情報」に「日本の数倍の割合で殺人、強盗、強姦事件等の凶悪犯罪やテロが発生している。」と書かれているように一般に思われているほど安全ではありません。タイだけではないのですが「海外で(短期間であれども)生活する」ということは日本国内にいるのとは異なり「自分の身は自分で守る」という大原則が重要になってきます。まずは皆さんにそのことを心に刻んでいただきたいですね。
以下は、タイでの犯罪の具体的な例を挙げてみます。
盗難
盗難にもいくつか種類がありますが、まずアパートの室内からの盗難のケース。多いのはそのアパートで働いているメイド、警備員というケースで、アパートの他の住人とのコミュニケーションで変な噂が無いか日ごろから注意しておくことが必要です。必要に応じて自室のドアに自分だけの鍵をつける、というのも方法です。タイ人のアパートでは普通に行われていることです。
道端では引ったくり、特に最近はバイクですれ違いざまにバッグをひったくるというケースが多発しています。中にはカバンを守ろうとして引きずられて怪我を負った、ということもあります。道を歩くときも前後に注意は必要です。特にATMからお金を引き出した直後を狙われるケースがあるのでそのような場合は特に警戒をしたほうが良いです。
変わったやり方として、車に乗った美女(実際はニューハーフのケースも多い)に「道を聞かれて」助手席に座ったところでひざ上に広げられた地図の下で手に持っていたバッグをナイフで切られて中身を盗られた、というものもあります。男性の心理をうまく付いた古典的な強盗です。そもそも道を尋ねるのに外国人に尋ねるほうがおかしいのですからこういうケースははなから疑ってかかるべきでしょう。
また睡眠薬強盗も多いですね。美女に誘われて食事をしたら眠くなって、というから女性の胸の先端に薬が塗ってあったのでは?というケースもあるそうです。この手の誘惑の数はバンコクは非常に多いですが、いきなり「行きずりの女性と」というのはリスクが高いことを肝に銘じておくべきでしょう。
殺人
タイの地元の新聞を読んでいると毎日のように殺された人の写真が載っているのからも分かるようにタイでは決して殺人は少なくありません。刃物はもちろん、銃も合法、非合法を含めて市中に多く出回っています。これらが凶器となる可能性は常にあるわけです。ラチャダーの繁華街で泥酔した大物政治家の息子が警察官を射殺した、などという事件がありましたが盛り場でのトラブルは一線超える場合がありますので要注意です。
数年前に日本企業の多く入居する工業団地で日本人の工場管理者が銃で撃たれて重症を負うという話がありましたし、従業員の休暇の理由を聞いたら配偶者が銃で撃たれて入院しているから、などという話も結構聞きます。常日頃からタイ人の恨みを買わないようにすること、どうしても社内の荒療治(特定利権や不良社員の排除など)が必要な場合は会社とも相談して身辺の安全を確保する、ということも視野に入れる必要があります。
詐欺
古典的ハウツー本「地球の歩き方」にものっていて古典的手法なのに絶えず被害者がでているのが「カード賭博詐欺」です。このケースでは実際に筆者の知り合いが被害に会ったので具体的な手口を述べて見ましょう。
彼女がファッション先端地のサイアムを歩いているとかなり日本語を話せるタイ人から「あなたは日本人じゃないですか?」と声をかけられました。彼の妹が日本に出稼ぎに行っていて、「母親が家で心配しているので日本の話を聞かせてあげて欲しい」といって彼の家に連れて行かれたそうです。ところが家には母親はおらず、父親と称する男性がおり、「俺は(違法)賭博場でカード賭博のディーラーをやっている。あなたにもイカサマの方法教えてあげよう」と「イカサマ」の方法を伝授してくれました。
そこに(都合よく)現れたのが(東南アジアでも原油産出で裕福で有名な)ブルネイ人の男性。父親はここで「教えてあげた方法で彼をカモにしよう」といい、即席のカード賭博を開帳。イカサマのおかげもあって彼女は勝ちまくります。「これが最後の勝負」とカードを配ったところで父親は「お前のこれまでの儲けを実際にもらうにはこの勝負で掛け金と同額の『現金』を見せ金として積まなければいけない。」「配ったカードはイカサマのおかげもあって勝ちに間違いはない。お前が金を用意できれば相手の金を全部もらえるんだ。なんとか用意できないか?」欲ボケというだけではくここまでの雰囲気に飲まれてしまって「お金を用意しなきゃいけない」という気持ちに追い詰められた彼女は国際キャッシュカードとクレジットカードを使って70万円以上のお金を引き出して「父親」に渡したんですが「まだ足りない。なんとかしろ」といわれ続け、やっとホテルに戻ってきたところで筆者の下に電話をしてきて「これもしかして詐欺か何かですかねえ?」と聞いてきた訳です。
この時点でまだ彼女の中には「もしかしたら詐欺?」というくらいの意識しかなかったのが現実でした。それだけ巧妙に「その世界」に巻き込まれてしまったわけです。「そんなのは100%詐欺以外の何者でもない!」と筆者が話をしたんですが今度は「ホテルのロビーに仲間らしき男が見張っている…」というので筆者の知り合いの腕っ節の効く人間らと救出作戦を敢行してホテルの裏口から連れ出してツーリストポリスに通報、同行してくれた弁護士の話もあって翌日を待って犯行が行われたと思われるマンションを探したんですがいかんせんバンコクに不案内の彼女の記憶をたどってもたどりつくことが出来ませんでした。
このケースではまず第一に「男性に誘われてホイホイ付いて行く日本人女性」というところでもうアウトです。こんなノーガードだと襲われて身包みはがされた上で殺されてもおかしくはない話ですからね。幸い犯人たちの目的は「金」だったので命に別状が無かったことだけが良かったことでしょうか?「日本語が話せる」というだけで相手を信用してしまうようでは自己防衛能力に欠けると言われても仕方が無いでしょう。逆にそういうケースこそ一番警戒しなければいけないところなのです。一度彼らの土俵に引き込まれてしまえば上のケースが示すように雰囲気に呑まれて正常な判断が出来なくなります。ですから最初に「断る」ことが重要なのです。
麻薬
現在でも数人の日本人が留置場や刑務所で「麻薬売買」にかかわった犯罪者として母国への帰国もままならない状態に置かれています。タイでは麻薬の取り扱いは重大な犯罪です。しかし盛り場などで大麻や覚せい剤が出回っているのも公然の事実。結局は本人がどれだけ己を律して罪に手を染めないで済ませるか、ということです。麻薬の場合では警察が摘発のために「密告」を奨励しており、売人が販売した後にその足で警官に密告して買った人間を逮捕させて密告の情報料をせしめる、というのはもう定番といってもいいやり方です。
基本的にそういうものの流通している場所(繁華街のディスコなど)に近づかない。そういう場所に行って他者からの誘惑があったとしても断じて「使わない」「買わない」で通すこと。無事に日本に戻ることを考えたらこの程度はやりとおして当然ということです。
睡眠薬強盗や詐欺、麻薬で総じていえるのは「向こうから声をかけてくる人間は疑ってかかれ」ということです。特に「日本語で話しながら観光客に近づいてくる」タイプのタイ人は最も警戒しなければいけない相手だということを肝に銘じてください。それを注意するだけでもバンコク滞在中の安全の確率は大幅にアップするはずですから。