およそ15~20年前と言うのはまだタイの医療と言うのは遅れていると見られており、タイに進出していた日系企業でも会社によっては「重い疾病にかかったらシンガポールの病院に行かせろ」「健康診断は香港やシンガポールで」という会社がまだまだありました。
しかしその後1990年代にタイ政府は「病院産業」をBOI(投資委員会)による投資奨励対象として承認するようになり、それ以降の大型病院設立、増床、建替えのブームを巻き起こしました。こういった投資拡大による新鋭設備の導入に海外留学帰りの医者が従事が重なって、「海外からのお客様に対するサービス」が向上。現在では特にアラブ系やインド系の富裕層がバンコクまで治療に来ることも普通になり、外貨獲得のための重要な手段の一つとなりつつあります。
タイ・バンコクにある日本人対応の大型病院
並行するように日本人に対する対応も充実してきており、「日本人専門窓口」を持つ病院や、そこまでいかなくても日本語通訳が常駐している病院も増えてきており、タイ語や英語に弱い日本人でも安心して病院にいけるような態勢が整っているのが現状です。特に以下にあげる4大病院は日本人の居住エリアに近く日本語対応が充実するとともに海外傷害保険のキャッシュレスサービスに対応しているため使いやすい病院です。
閑話休題になりますが、日本留学経験のある医者もいるとは言うものの圧倒的に多いのは欧米で勉強してきた医者です。このため日本であれば患部を残して服薬で対応するところをすぐに「手術」という話になる場合があります。筆者の知人でも胃潰瘍でタイの病院では「胃の三分の一を切除しなければいけない」と言われ、どうしても嫌なので日本の病院で再検査してもらったところ服薬で治った、という例があります。手術の方が早く治癒できる例もあるとは思いますが御自身の判断にそぐわない場合は日本で改めてみてもらうことも一つの方法です。また如何に留学経験がある医者と言えどもミスは必ずあり得ます。筆者の知る例でも歯のインプラントの不具合であやうく膿が脳にまで侵入しかねない状態に陥った例があります。術後に不具合や体調悪化を感じた場合は他の先生に見てもらってセカンドオピニオンをもらうことも考えなければいけません。
バムルンラード・インターナショナル
1990年代に大改装をしてホテル並みの応接、病室と高級ショッピングセンター並みの店舗を備える大型病院の嚆矢となった病院。改装直後は本当にビックリさせられました。
受付に日本人専門窓口が設置しており初めてでも問題なく利用できます。ベッド数も554床と最大です。
場所 | スクンビット通りソイ3(ナナヌア) 33 Sukhumvit Soi 3, Bangkok 10110 |
24時間サービス日本語直通電話 | 0-2667-1501 |
代表電話 | 0-2667-1000 |
救急 | 0-2667-2999 |
日本語ホームページ | http://www.bumrungrad.com/thailand-hospital-jp/ |
バンコク病院メディカルセンター
ジャパンメディカルセンター(JMS)と呼ばれる10名からなる専門医療チームを持つ病院。他にも日本大学を卒業した各クリニックの医師も常駐しています。
場所 | ニューペブリ通りソイ寸ヴィチャイ7内 2, Soi Soonvichai 7, New Petchburi Road, Bangkok, 10310 |
24時間サービス日本語直通電話 | 08-9814-3000 |
日本語窓口 (朝7時から夜8時まで) |
0-2310-3257 |
日本語ホームページ | http://www.bangkokhospital.com/jp/ |
プララーム9病院
東大出身のモンコン先生他日本語の話せる医師と日本人のサービス担当が常駐しています。(日本人通訳の勤務時間は朝8時から夕方4時まで)
場所 | ラマ9世通りすぐ近く(入り口が結構分かりくいです) 99, Soi Praram9 Hospital, Rama 9 road, Bangkok, 10320 |
電話番号 | 0-2202-9999 (日本人担当あり) |
救急番号 | 0-2202-9911 |
日本語ホームページ | http://www.praram9.com/jp/index.php |
サミティヴェート病院(スクンビット、シーナカリン)
日本人が多く居住するエリアの真ん中にある病院。そのため一番行きやすく日本人顧客非常に多い。また別にシーナカリン通りにもグループの病院あり。
場所 | スクンビット通りソイ49 133, Soi 49, Sukhumvit Road, Bangkok, 10110 |
日本人相談窓口 | 0-23813491, 0-27118000 |
代表電話 | 0-2711-8000 (24時間) |
日本語ホームページ | http://www.samitivejhospitals.com/ (タイ語と英語のみ) |
以上のほかにもBNH病院やピヤヴェート病院など大型の病院はどこも設備が充実しておりその点では引けをとりません。これらの病院では定期健康診断のパッケージも各種用意してあり、日本人駐在員には会社負担で診断を受けさせている会社も多くあります。
海外傷害保険について
冒頭で「海外傷害保険」について言及しましたが、タイ赴任の前に日本で保険会社の提供する「海外傷害保険」に加盟しておくと、多くの病院でキャッシュレスで入院を含む治療が受けられます。国民健康保険の「国保海外療養費支給制度」を利用することも可能ですが、この場合はまず自費で病院に医療費の支払いを行った後で出身地の市町村で「払い戻しを受ける」という形になります。上記のような私立病院でいい部屋に入院した場合などは医療費が嵩みますので「海外傷害保険」を使うのが便利です。ただし海外傷害保険では歯科治療には対応していない場合がほとんどなので「国保」の申請が不可欠になります。ご注意ください。
日本で海外傷害保険に加入してこなかった場合や、タイで採用された現地採用者の場合、AIA生命保険などで用意している日本人向け医療保険に加盟するのもひとつの手でしょう。
タイの社会保険
ところでタイでは法律により「社会保険」への強制加入が企業の従業員には義務付けられています。(外国人も同様。保険の掛け金(給与の3%。最高3000バーツ)は企業と従業員で半々で負担)この社会保険加入者は加入時に自身の通いやすい(多くは住居に最寄)の社会保険指定病院を選択し、その病院にいけば無料で治療が受けられるようになります。しかし一般労働者ならばともかくスタッフレベルのタイ人になると「社会保険でもらった薬は効かない」といったこの保険の利用に否定的な声が多くなります。筆者が実際に登録したスクンビットソイ55のカミリアン病院に行って診察を受けてみたことがあります。
まず最初の受付から「社会保険適用」の患者は別に分けられていました。診察自体は普通に行われたのですが(病状は普通の風邪でした)最後に窓口でもらった薬はいくつかありましたがそのうちの一つはそれこそ市内のコンビニで1錠1バーツ(約2.8円)で販売されている解熱剤をそのまま病院の袋に入れたもの、でした。これであれば街中の「薬屋」に行って症状を話ししたほうが余程気の利いた薬を調合してくれます。タイの薬屋は意外と薬学の勉強をきちんとしてきた人が多く、病状をきちんと説明すればそれにあわせて各種薬剤を選んでくれるのです。これを考えれば「社会保険」はあくまで最低限のセーフティーネットで、駐在員やタイ人従業員も別途きちんと保険に加入する必要があると実感した次第です。
最近はタイの保険会社でも団体生命保険(医療特約付き)の販売も行っており、その保険の適用や掛け金などは保険会社と打ち合わせの上で設定できるので法人であれば駐在員については海外傷害保険を、タイ人従業員には団体生命保険(医療特約付き)をという形で保険を整えれば良いのではないでしょうか。タイには日本生命、ミレア生命といった日本の生命保険会社、第一生命の提携しているオーシャンライフインシュランスなどもあるので最新の動向と情報を集めて対応していけばよいでしょう。