タイでの銀行口座の開設とキャッシュカード
タイに1年以上の長期に滞在する場合には手元に多額の現金を置いておくわけにも行きませんから「地元の銀行に預金口座を開設する」ことが必要になってきます。日本語の通じない海外での銀行口座開設をどうやったらスムーズに行えるか、また合わせて発行できるキャッシュカードについてお話しましょう。
(1)タイの銀行
昔は「タイに行ったら(旧)三井銀行か(旧)東京銀行に行け」といわれたように古くからタイで業務を行っている日本の銀行が個人・企業口座の開設とも面倒を見てくれていました。しかしその後タイへの日本の銀行の進出は増えたものの、逆にその活動は企業への営業に特化してしまい個人取引は受けていません。このため個人で銀行口座を開設する場合はタイの地場銀行に口座を開設することになります。法人取引であれば日本本社で取引のある邦銀支店との取引開始は難しくありません。現在タイでは東京三菱UFJ、三井住友、みずほが支店として銀行取引全般の取り扱いを行っています。他にりそな銀行や地銀などのように駐在員事務所だけ設けている銀行もあります。
現在タイの銀行大手はバンコック(バンコク)銀行を筆頭に、政府系のクルンタイ銀行、サイアム商業銀行、ガシコーン銀行(旧タイ農民銀行)の4行が大手になります。以下、アユタヤ銀行やTMB銀行(旧タイ軍人銀行)などの中堅行から新興のタナチャート銀行、外資系のシティバンク、UOB銀行など多くの銀行があります。個人の銀行取引では支店数が多く扱いやすい銀行ということで前期の大手・中堅行を主に考えた方が良いでしょう。タイに赴任・就職をされた方の場合はその会社の使っている銀行に口座を設けさせるケースが多々あります。
(2) 銀行口座開設の資格
外国人による銀行口座開設についてはタイの中央銀行の指導もあって誰でも自由に開設できるわけではありません。現時点(2010年6月)の原則は口座開設には必ず「パスポート」と「労働許可証(ワークパーミット)」が必要である、ということです。パスポートは皆さんタイに来られる以上は必ずお持ちでしょうが、労働許可証についてはタイ国内の企業に就職した上で役所に手続きをしないともらえません。このため短期滞在の旅行者は「原則」口座開設が出来ません。
「原則」と書いたのは例外もあるからで、実際6銀行の6支店を訪問して聞いてみたところ、5支店は「労働許可証必須」だったものの、1支店は「パスポートのみで可」との返事をもらいました。この辺はその銀行の姿勢というよりむしろその支店の支店長の姿勢に影響されるもので、必ずしもA銀行B支店でOKだったからA銀行C支店でも出来るはず、という風には行かないので注意が必要です。繁華街に位置して昔から外人取引が多かったり、新しい支店で「口座や預金残高を増やしたい」という支店がパスポートのみでの口座開設を前向きに検討してくれるケースが多いようです。ただしパスポートのみでの口座開設を了解してくれる支店がどこになるかは一々チェックが必要です。
(3) 労働許可証が無い場合の開設
一番問題になるのは実は定年退職者による「ロングステイ」のケースです。この場合「労働許可証がない」ため前項の口座開設要件を満たしていません。しかしロングステイビザの申請には「タイ国内の預金口座に80万バーツの預金があること」(2010年6月現在)という条件があるのですが口座が作れなければビザの申請も出来ない、ということになります。
このケースについて正式に対応を表明しているのがバンコック銀行で、同社の日本語ホームページ(http://www.bangkokbank.com/Japanese)によれば「在タイ日本国大使館発行の戸籍記載事項証明または運転免許証抜粋証明」を持ち込めば口座開設が出来る、としています。(各証明書の発行については在タイ日本大使館のホームページをご覧ください。http://www.th.emb-japan.go.jp/)もっとも同じバンコックでもこのやり方による口座開設は出来るだけシーロム通りにある本店のカウンターでの手続きをお勧めします。本店であれば問題なく出来ますが、支店によってはこのケースに対応しない場合もあるのでご注意ください。他の銀行については個別に相談するしかないでしょう。
(4) 口座の種類とキャッシュカード
タイの一般銀行が用意している預金口座で通常必要になるのはA.普通預金口座(Saving Deposit)、B.定期預金口座(Fixed Deposit)、C.当座預金口座の3種類でしょう。個人であれば普通預金口座と資金の必要に応じて定期預金口座(日本の金利よりははるかによくなります)、ビジネスをする人の場合は当座預金口座を開設して小切手帳を作ることも出来ます。(日本で言う「手形」はタイでは使われていません。小切手になります。)ただし通常は当座口座開設には新規口座開設から6ヶ月以上の取引実績が必要になります。普通預金や定期預金口座は開設手続きが終われば即利用可能になりますが当座預金のみは小切手のサインの登録などの手続きのため通常は翌日から仕様可能になります。。
口座開設に際して申込書への記入が必要になりますが、最低限度の英語が理解できれば問題なく記入が出来ますのでご自身で手続きをしてみてください。上に挙げたバンコック銀行の日本語ホームページには同行の口座開設用紙に日本語訳を記入した例示なども掲載されているので非常に便利です。
個人で普通預金口座を作る場合は通常キャッシュカードも一緒に作成できます。現在タイで一般的になっているカードはデビットカード機能つき(「クレジットカード」ではありません)のもので、クレジットカード同様にカード表面に「VISA」などのロゴが入っているのでクレジットカードと誤解しやすいのでご注意ください。『クレジットカード』は「カード会社が先に払ってくれて後から精算」という形ですが、『デビットカード』は銀行預金の金額の範囲内で買い物が出来る、というカードです。大体最初に300バーツ程度を支払えばその場でカードをもらえます。法人についてはキャッシュカードはありません。(法人クレジットカードはあります。)
[ 写真(上):バンコク銀行の預金通帳とキャッシュカード ]
(5) インターネットバンキング
タイの地場銀行各行も個人向けおよび法人向けインターネットサービスを用意しています。個人向けのインターネットサービスの申し込みに際しては労働許可証が「必須」になりますのでご注意ください。このサービスを用いることでタイ国内にあるご自分の銀行口座の残高確認、入出金の推移、タイ国内の銀行預金口座への送金、また銀行によっては外国送金もできます。セキュリティーについては世界の一般的なセキュリティーレベルに達しているといえるでしょう。詳細は口座を設けた銀行にご確認ください。
(6) ATMと関連機械
日本との大きな違いはATMが24時間稼動していること。それとATMと呼んでいますが通常街中に設置されている機械は現金支払機としての機能が主で日本のように「引き出し、預け入れ、通帳記帳」がセットになっている機械はありません。銀行の支店にいくと「ATM」「預入専門機」「記帳専門機」がまとめておいてあるエリアがあります。もっともATMの機能は現金の引き出し以外にも「他行も含む他の口座への送金」「クレジットカードの支払い」「携帯電話利用料金の支払い」といったことも可能です。またサイアム商業銀行やガシコン銀行、タナチャート銀行のATMの中には「使用言語」として日本語を選択できる機械もあります。使いようによってはかなり便利に使えます。
[ 使用目的で異なる機械が設置してある ]
以前はATMや預入機からの他行への送金は出来なかったのですがここ1,2年で急速に改善され、A行のATMを使ってB行の口座への入金が出来ます。ただし当然のことながら手数料はかかります。
また日本と異なり、同じ銀行の口座でも「他県」にある口座に送金する場合には手数料が発生しますのでご注意ください。