タイでの生活の基本と知恵
簡単なタイでの生活のまとめです。初めにお読みください。
王室
タイは1782年からラタナコシン王朝によって国が治められており、現在の国王陛下は9代目(即位:1946年)です。一般に「ラマ9世王陛下」と呼びます。現国王陛下はタイ国民から絶大な支持を受けており、映画館などで映画の始まる前に「国王賛歌」が流れますのでその際は起立して静聴しましょう。なおタイは国王陛下および王室ご一族に対する「不敬罪」が存在する国ですので公共の場での王室ご一家の批判は禁句です。
名前
タイ人は基本はファーストネームで呼び合います。また日本語で「さん」をつけるように「クン」を名前の前に付けます。(例:クン・タロー)少し親しくなればお互いのニックネーム(タイ語で「チュー・レン」)で呼び合います。この「チュー・レン」は日本語言うニックネームとは意味合いが異なり、本来は宗教上(精霊信仰)の理由から親が生まれた子供につけるものです。
タイ公用語
タイ人が話す言葉はタイの公用語であるタイ語です。しかしタイ語には大まかに分けても中部、北部、南部、東北部の方言があり、特に東北部の方言はラオスの影響を強く受けており独特です。ただし地方の人でも基本的な標準語教育を受けていることも多く、普通に標準のタイ語で話しかけても問題はありません。
英語
タイでは上の階級の人ほど留学経験も多く英語を流暢に使いますし、街中で英語で話しかけても日本よりは通じるでしょう(ただしバンコク市内)。繁華街や観光地のタイ人には英語はもちろん片言の日本語を話せる人も多くいます。ただし日本語で話しかけてくる人には裏がある(主に店への呼び込み)ことが多いので注意が必要です。
道徳
タイでは年長者に対しては敬意をもって接する意識を皆がきちんと持っています。日本人は会社では若くても立場上地位が上になることが多いのですがこの意識を理解しないと思わぬ反発を招くこともありえるので注意しましょう。また会議で上司いる前で積極的に発言が無い場合もタイ人スタッフのこの意識が邪魔になっていることが多いので、率直な発言が出来る環境を整えてあげる必要があります。
お金
タイの通貨単位はバーツですが、その下の単位サタンもまだ使われています。(100サタン=1バーツ)実際に流通している貨幣は硬貨では25サタン(1サルンともいう)、50サタン(2サルンともいう)、1バーツ、2バーツ、5バーツ、10バーツ。新2バーツ硬貨は黄金色をしているので判別が付きますが、旧2バーツ硬貨は1バーツ硬貨と同じ色でサイズが少し違うだけなので注意が必要です。紙幣では10バーツ、20バーツ、50バーツ、100バーツ、500バーツ、1000バーツ札が流通していますが10バーツ硬貨が流通してから10バーツ札はほとんど見なくなりました。
挨拶
タイでの挨拶は「サワディー・クラップ(女性の場合は後半が「カー」と異なります)」。朝昼晩ともこれでOKです。挨拶をする際に手を合わせる「ワイ」は基本は目下の人から目上の人に対して行い、目上の人が返します。目下の人は合わせる手の位置を高めに、目上の人は手の位置を低めにするのが基本。ただし日本人のように朝会ったら必ず挨拶をする、という習慣はないので違和感があるかもしれません。(日系企業ではきちんとこの挨拶を教育している会社が多いです)
祝祭日
日本からタイに出向された場合などは実働日数が増える場合があります。タイでは規定の祝祭日が最低15日と少なく、また習慣的に年始年末の休みが少なく、さらにお盆休暇のような習慣が無いからです。タイで通常一番長い法定の休みはタイ正月(4月13日~15日)の3日間です。ただし企業によっては他の休みなどを移動させたり調節して長めに休暇を取るところもあります。ただし国王誕生日(12月5日)や王妃誕生日(8月12日)は動かすことは出来ないので会社の管理者の方はご用心。
タイ国民と宗教
タイでは国民の多くは仏教徒ですが日本の仏教徒は大きく異なる「南方上座部仏教」を信仰しています。日本などで信仰されている「大乗仏教系の諸宗派」とはかなり趣が違います。会社員の男性が出家など(他には兵役)のために休暇を取ることも出来ます。タイの男性は出来るだけ一生うちに一度は出家することが理想とされているからです。また宗派・宗教により食べ物に制限がある場合がありますから注意しましょう。仏教とはもちろん、イスラム教徒でも普段の生活では普通の服装をしている人が多いのです。仏教徒でも常日頃から菜食という人は少ないですが、よくあるのが「牛肉は食べない」という人。また一定期間菜食をしたり(「斎(タイ語でジェー)」と呼ばれる習慣です。)事も広く行われています。
宗教に関するタブー
タイで信仰されている上座部仏教の僧侶には厳しい戒律が223も課されています。日本人には意外なことですがその戒律の中に「肉食の禁」はありません。タイの僧侶は信者から寄進された食べ物であればなんでも食べることが出来ます。逆に女性に触れることや昼以降に食事をしないこと、お酒を飲まず音曲を楽しまないこと、そしてお金に手を触れないこと、などの禁があります。このため日本の一部宗派の僧のように結婚してお酒も飲み、夕食を摂るような僧はタイの僧侶から認められません。また女性の方はタイの僧に手を触れることは決してしてはいけません。これは僧にとって最も重大な戒律違反になりますから。また同様に観光客の訪れる寺で肌を多く露出したファッションで入るのも僧に対して悪影響を及ぼすので禁止されるのです。王宮寺院の場合はそのような場合に上に羽織る上下の簡単な服を用意しています。
気候
タイは熱帯ですので基本的には日本より暑いです。ざっと分けて11月から2月が乾季(寒季、冬ですね)、3月から5月が暑季(一番暑い季節です)、6月から10月が雨季で、乾季と暑季は昔は雨がほとんど降りませんでしたが最近は雨が降る日もあります。また雨季にはスコールが特に夕方から夜にかけて降るので朝晴れていても傘は必須です。暑季のタイは日差しが強いため外出に際しては帽子か日傘を使うのが良いでしょう。それでなければ日焼け止めを塗るなどの対策をしないと半日外を出歩くだけ真っ赤に日焼けしてしまいます。
また、気温が高いことは体の新陳代謝を活発化させるために日本に住んでいるときよりも爪や髪、そして鼻毛などの伸びるのが早くなります。また直射日光が強いので外出の際は露出している素肌のケアをきちんとしましょう。また自分で運転される方はサングラスの着用が必要です。長時間の裸眼による運転はのちのち白内障や緑内障の原因となります。
電気の規格
家庭の電源は240Vです。日本から持ってきた家電、AV機器で100Vのみに対応している物を使うには変圧器が必要になります。それぞれのアダプターに「100V~240V」と書いてあるものならばそのまま利用が可能です。コンセントの形は日本と同じです。変換コネクターは不要です。
バンコク市内の停電は昔に比べてかなり少なくなりました。ただし電力低下はしばしば起きるようです。電力低下によってそれまで使えていた電気機器が使えなくなる場合がありますのでご注意ください。パソコンのデータのこまめなセーブは基本です。
冷房
タイのホテルや乗り物(BTSや遠距離バス)では日本では考えられないほどエアコンが効いている場合はあります。ホテルの部屋の温度は部屋に入ったところですぐに自分で調節しましょう。遠距離バスで出かける場合はカーデガンなど上に羽織るものを用意した方がいいですね。冬場(11月から1月)の場合はジャンパーでも構わないくらいです。またタイのエアコンの温度調節は設定してあっても外気の温度によって上下することが多いので要注意。同じ温度設定にしてあっても、例えば昼間と雨の降った夜では室内温度がかなり変わります。これは風邪を引いたり、お腹を壊す原因になります。
害虫
生活に身近な害虫は蚊です。バンコクでも日本とは比べ物にならないくらいの蚊がいます。こうした蚊はデング熱やマラリアといった伝染病を媒介しますので殺虫剤や電気蚊取りなどは用意しておきましょう。他に多いのは蟻で室内には高い階でも侵入してくることがあります。蟻の種類によっては人を咬む事があります。咬まれた場合は速やかにかゆみ止めの軟膏などを塗りましょう。また時折アパートやコンドミニアムでも白蟻の害に合う場合があります。木製の部分に細かい粉末が沸いてきたら要注意です。
交通ルール
タイは人が右側、車が左側通行と日本と同じですので違和感ありません。ただし交通ルール上、交差点では概ね車の左折は信号に関係なくOKですので道を渡る際は気をつけましょう。またタイは基本的に車優先社会ですので横断歩道を渡る際も左右の車によく注意してわたることが必要です
交通機関
バンコク市内には高架鉄道(BTS)や地下鉄(MRT)がありますが、路線が限られているためにタクシーを多く利用する必要があります。しかし日本のタクシーとは異なり初乗りが35バーツ(約100円)と安く、市内の端から端まで行っても800円もかかりません。地理に慣れてきたらバスなどを使っても良いでしょう。
乗り物に乗るのに毎回交渉が必要だった以前とは違い「METER TAXI」と表記のあるタクシーなら交渉は不要なので安心です。市内を走る3輪タクシー(トゥクトゥク)は値段交渉が必要なので気をつけてください。またメータータクシーでも乗車した際にメーターを稼動させない運転手がいたりしますので注意が必要です。通常は乗車後にボンネットの真ん中にあるメーターに「35」と赤く数字がつくので念のため確認しましょう。
格安の乗り物になるバスは路線が複雑で普通の人には使いにくいものですが(行き先表示はほとんどタイ語、少し英語表示のものがある程度)最近は日本書店で在留日本人によってで編集された日本語のバス路線ガイドが販売されていますので参考にしましょう。ただし所要時間はタクシーでの移動の1.5倍から2倍はかかる場合がありますので注意が必要です。
銀行
銀行の営業時間は普通は朝8時半から午後3時半で、土日は休みです。ただしショッピングセンターの中に入っているような支店では午前10時から午後6時といった営業時間も多く、また365日営業もしています。銀行のキャッシュカードの機械は「24時間365日」稼動です。他行のカードも利用可能ですが、1ヶ月に他行のATMを5回使うと5回目から手数料が発生したり、口座のある県とは違う県で利用すると手数料が発生する、といったケースがあります。
チップ
タイでもチップの習慣はあることはありますが欧米のように厳密なものでもなく、ホテルでのベッドメイキング用などを除けば食事のときなどは支払いの金額に応じて「釣銭は要らないから」程度の感じだと思えばよいでしょう。安い一膳飯屋などで小額の食事をしたときなどは別にはらう必要はありません。
水・飲料
タイの水道水は水質に問題があるためそのまま飲用には適しません。飲む水は店で購入したものや、街中に設置されたUV殺菌されたものにしましょう。(ただし後者は元の水質が悪いと匂いなどがある場合があります。)中には歯磨きに購入した水を使う方もいるそうですがそこまで神経質になる必要は無いのではないかと思います。
タイでは各種の飲料が売られており緑茶系飲料なども数多くありますが、日本では考えられないほど全般に「甘い」ので注意が必要です。市販の緑茶系飲料もほとんど甘いものです。またファーストフード店のドリンクなども日本よりも甘く、濃かったりするので覚悟が必要です。
コンビニ
タイではコンビニエンスストアチェーンが日本並みに発達しています。セブンイレブンが最大手で他にファミリーマートやampmなどがあります。地方にいっても大抵のところにはコンビニが24時間営業しているので便利です。ただし日本のように弁当やおかず関係は多くありません。(一部メーカーの冷凍のパックをレンジで暖めるような感じです。)
日本食の食材
自炊で日本食を作る場合など、バンコクでもフジスーパーや伊勢丹・エンポリアムの中のスーパーマーケット、日系スーパーのジャスコなどに行けば日本製の食材がたいてい手に入るので不自由はしません。ただし輸入物ですからどうしても割高になるのは覚悟しなければいません。極度に味を気にしなければ醤油、味噌、納豆、豆腐などはタイで製造しているものが安く手に入ります。
お酒
タイでは仏教界の力が強く、仏教的道徳観などからお酒の販売、飲酒について制限があります。お酒の販売が許可されている時間帯は 11:00~14:00 と 17:00~24:00 です。ただしレストランなどでこの時間帯以外にお酒を提供することはできます。また国王誕生日(12月5日)、王妃誕生日(8月12日)や仏教の祭日には酒類の販売ばかりでなくレストランでの提供も全面禁止になります。
飲酒
タイでは日本のように深酒をして道端に嘔吐するような行為はあまり見られません。恥ずかしい行為はしないようにしましょう。逆にタイ人は長年の習慣で飲酒をしていても平気で運転をします。(地位が上の人でもそうです)とはいえタイでも徐々に飲酒運転に対する啓蒙と違反のチェックが厳しくなっていますので同行の運転手には飲酒はさせないようにしましょう。
タバコ
タイの多くレストラン、事務所、ビルなどは禁煙になっているので愛煙家には厳しい社会です。会社の事務所でも「喫煙は外」というところも多くなっています。またタクシン政権時代にタバコの箱の絵柄に「一目でタバコを吸いたくなくなるような写真」を採用させ、コンビニでの販売も「表からは見えないよう」に展示されています。(しかし普通に買えます)
麻薬
タイでも大麻、覚せい剤などの麻薬と麻薬要物質の売買、使用は禁止されています。この手のものの摘発には「密告」が常套手段として使われており、売り手がその足で密告して買い手を逮捕させるといった行為を行われますので手を出すのはいけません。バンコクのディスコ街やパタヤなどの歓楽地では特に誘惑が多いそうですが逮捕された場合は最悪帰国が出来なくなります。実際に逮捕されたケースで収容先を地方の収容所に頻繁に変更されて弁護士も身柄を見つけるだけでも一苦労したという話もあります。皆さん絶対に手を出さないでください。
賭博
タイ人はカード、ムエタイ、サッカー、闘鶏、闘魚など色々な賭け事を行っていますがタイで公に認められている賭博はバンコク市内の2箇所の公営競馬上で行われる競馬のみです。それ以外で行われる賭博は違法になりますから注意しましょう。どうしても賭け事を楽しみたいのであればカンボジアのタイ国境の町ポイペトにある公営カジノにいくのも手です。(これはカンボジアの法律で合法です。)
コピー品・禁制品
タイではまだまだコピー品が幅を利かせています。これはブランド物の装飾品・時計・バッグなどからパソコンソフトに至るまでです。こうしたコピー品は日本への帰国時に税関で見つかれば没収措置をとられますので注意してください。また土産物屋で販売している昆虫の標本の一部や象牙などもワシントン条約の禁制品に指定されているものがありますので注意が必要です。
ペット
タイではチャトチャック市場(ウィークエンドマーケット)などあちこちで可愛い犬や猫を販売しています。これらを飼った後に日本に持ち帰ろうとすると検疫の関係もあって非常に複雑で時間のかかる手続きを踏まないといけません。また販売されている中にはスローロリスや魚のアロワナなどやはりワシントン条約で禁止されている動物もいますのでこういうものの購入は控えましょう。